財源確保事例

「子どもは未来を担う宝である」の出だしで始まるのは、千代田区の「子育て支援の財源の確保のための条例」である。この条例は、平成174月から施行した5年間のサンセット方式で、平成22年度で効力を失っている。この条例の効果を探ってみる。

 

都内特有の特別住民税の1%を、子育てのための予算に目的化した。この条例の結果、保育園待機児童ゼロを8年間も、実現させたのである。この他に、特定不妊治療、妊婦健康診査などにこの財源を充て、子育て支援に一定の効果を発揮した。

 

成功は、数字で表れた。区の人口は増加し税収の底上げに貢献した。特に0歳から5歳の人口増が顕著だったことはこの条例の効果といっていい。合計特殊出生率も上昇したのである。どのような施策を実施するにしても、財源の確保策が課題となる。法定外目的税(増税)ではなく、特別住民税で目的化したところに、条例の価値があるのだ。

 

千代田区の子育て支援のための事例は、1つの参考となるのではないかと考える。名古屋市の住民税減税とは、考え方が対称的であることに注目したい。ヘーゲルの弁証法でいえば、矛盾する2つの概念を比較検討して、上位の概念を導き出すことを可能とする。サンセット条例の価値も、もしかしたらそこにあるのではないか。研究の余地は、かなりある。