仮に今、自分や家族がここで急病になり、救急車を呼んだとしよう。数分後に救急車が到着したとしても、すぐに病院へ運んでもらえないとしたどう感じるだろう。当然、救急車を呼ぶくらいだから、一刻をあらそう事態であることはいうまでもない。残念ながら、救急車が到着しても、行く先である病院が決まらず、救急車内で待たされることが一部で起こっている。
川崎市の重症患者の救急搬送における現場滞在時間が30分以上かかってしまった割合は、全国の政令指定都市で3年連続ワースト1となってしまっている。その割合は平成19年が16.9%、平成20年で16.4%、平成21年が16.5%となっている。医療崩壊、医師不足、コンビニ受診など聞かれる今、人の命を救う救急医療は、本当に大丈夫なのか。問題を探る。
政令市における平成21年中の重症患者における30分以上の現場滞在時間の割合は、川崎市の16.5%に対して、札幌市2.1%、仙台市8.4%、さいたま市8.4%、千葉市9.2%、東京消防庁9%、横浜市5.4%、新潟市8.7%、静岡市1.4%、浜松市1%、名古屋市1.9%、京都市3.2%、大阪市4%、境市3.1%、神戸市5.8%、岡山市0.9%、広島市7.2%、福岡市1.1%、北九州市1.1%となっている。川崎市が際立って悪い数値であることが分かる。
搬送の遅延をきたす原因は、重症患者のうち65歳以上の高齢の方が約7割を占めている。救急で受け入れると入院が長期化することが見込まれ、病院には受け入れ難い実情があるのだと市側は議会で答弁する。その他にも、処置中、ベッド満床などの理由があげられるという。満床だから救急を受け入れられない割合は18%あった。医者が処置中であるというのが41.2%、処置困難・医師の専門外など、医者が関係する内容をあわせると76%にも及ぶ。
課題は、救急病院を退院した後に、その受け皿となる療養病床数が不足していることにある。神奈川県の保険医療計画の基準病床数の設定は、市町村の人口や受診率などの数値を基礎に算出している。療養病床数は、圏域ごとに計画で制限されているのである。一般病床と療養病床は、合算され基準病床数として示される。一般病床の稼働率は70%、療養病床の稼働率は90%を越えている。ある議員は、そのアンバランスを改善しなくてはならないと指摘する。
私は、救急医療の問題の解決にも「地方分権化」が必要だと考えている。保健医療計画は、神奈川県が決めている。地域の実情は無視されているといっていい。川崎市の抱える地域事情が加味されていない保険医療計画が、これまで示してきた数値を如実に表しているのかもしれない。今後は、市独自の保健医療計画で施策が展開できるよう、分権を進めていかなくてはならない。国の規制も変えてもらわなくてはならない。国会議員のなかで、どれだけの議員がこの問題を理解しているのだろうか。