経営力、政治力、市民力。政治に関する論文を読んでいると、これらの造語をよく目にする。1つの単語に「力」を加えるだけで、何かやってくれそうな伊吹(いぶき)といったものを感じる。それでは、行政に「力」を加えるとどうであろう。行政の一語だけでは組織をイメージするが、行政力となると自治体経営や自治体間競争のイメージが加わることになる。
行政力という造語を創ったのは、私の知る限りでは、末吉興一元北九州市長が最初だと推測する。著書の『実践都市経営』(PHP研究所)では、行政力とは何かこう著している。
1、計画的に、しかも長期的視野と市民の目線を併せもち
2、公正と公平を旨とし
3、積極的に情報公開し
4、住民市民には説明責任を果たし
5、常に財源を意識し
6、施策実施のタイミングを失せず
7、簡素効率的な組織・運営で
8、垣根をできるだけ取り払い
「市民と職員が一体となって取組むことではなかろうか。さらに一言でまとめれば「経営体」として常に考えることであろう」
今から何年前であったろうか。北九州市に行った際に末吉氏の講演を聴くチャンスを得たことがあった。今でも覚えているのは、北九州市の行財政改革について、人の体に例えた話をしていたことである。末吉氏は「行財政改革とは、全てを削るとやせ過ぎた体となり健康的でなくなる。出すところは出し、引っ込めるところは引っ込める。メリハリのあるスリムなボディーが美しい。行財政改革も同様なのだ」。私からこの意味の解説を加えるまでもなく、あまりにも分かりやすい表現が何故だか共感を覚え、何年経っても私の記憶に残っている。
行政力とは、この8項目に分かりやすく集約されている。これらの力を発揮するためには、行政職員のみの力では実現しない。鍵となるのは市民力(市民参加)との連携にある。公民一体のガバナンスが行政力を高め、これからの街の姿を間違えなく変える。この8項目が儀法であると確信している。