児童虐待を考える

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 児童虐待が後を絶たない。今日のニュースでも、母親の暴力により、尊い子どもの命が奪われたことを報じていた。親はきまって弁明する。躾の一貫だったのだと。親が子どもに、行き過ぎた暴力をふるうことはどう考えても理解ができない。周りにいる大人は、気付いてあげられなかったのかと、続く悲劇にとまどいすら覚えてしまう。 

丸田桂子著『虐待される子どもたち』(幻冬舎ルネッサンス新書)を読んだ。丸田先生は、私が地元でお世話になっている方で、尊敬する人物である。小児科医として、虐待を受けた2000人の子どもと向き合ってきた。この子どもたちと接して「医師として無力感に苛まれた」と、率直な気持ちを述べている。 

川崎市の児童虐待(2009年)の通告件数は、751件で増加の一途をたどっている。その内訳は、心理的虐待が274件、身体的虐待が250件、ネグレクトが212件、性的虐待が15件となっている。この数字はあくまでも通告件数なので表面化しない事例もあり、実際はもっと多いはずである。 

 児童相談所の業務には限界がある。親が拒めば実態を見逃すこともあるだろう。通告を受ける児童相談所に、強制的に踏み込む権限を与えることはできないだろうか。著者はいう「少し手を伸ばせば、救える命があることに気づいていただければと思う」。我々は、虐待を受けた子どもを見続けてきた医師の言葉を、重く受け止めなくてはならない。是非、丸田先生の著書を読んで頂きたい。