リノベーションのすすめ

IMG_1157_copy.jpg大学院に在籍中、リノベーションに関する論文を読んだことがあった。読めば、ヨーロッパに見られるように、公共建築物を大切によみがえらせ、財政負担の軽減を図る必要性を説いていた。その、典型的な成功事例が近くにあった。小学校の跡地を有効活用した「日本映画大学」である。川崎市は「映像のまち・かわさき」を謳った、まちづくりを推進している。

 

麻生区白山小学校の周辺は子どもの数が減り、隣接地との統合となった。旧白山小学校校舎に対し市は、市有財産の有効活用を図るべく検討に入り、公募によって跡地活用の事業提案を募り、結果、日本映画大学に決定した。12810万円で校舎を売却し、土地を賃料1734万円(年額)で33年間の貸与とした。市は高額の収益を得て、大学側は新築より安く設置が可能となる、ウインウインの関係が成立した。

 

IMG_1143_copy.jpg大学は、校舎の改修に5億円を投じてリノベーション。原型をとどめつつも、かつて学んだ小学校の校舎とは思えない程、デザイン性あふれるモダンで綺麗な建築物に姿を変えていた。市との協定も結ばれ、施設や校庭等を、災害時の避難所とする他、地域開放もする。地域への貢献も忘れてはいなかった。

 

 川崎市の財政が厳しい状況を、どう乗り越えて行くかが問われている。公共建築物の耐用年数の限界をむかえる建築物が増えていると同時に、地域の状況変化もあろう。多額の予算が伴う公共建築物の解体、新築、売却の選択の前に、リノベーションの可能性を探ることも悪くない。財政負担の軽減以上に、川崎の文化・芸術を育てることへのメリットは、はかり知れない効果となるからだ。