大学院に在籍中、リノベーションに関する論文を読んだことがあった。読めば、ヨーロッパに見られるように、公共建築物を大切によみがえらせ、財政負担の軽減を図る必要性を説いていた。その、典型的な成功事例が近くにあった。小学校の跡地を有効活用した「日本映画大学」である。川崎市は「映像のまち・かわさき」を謳った、まちづくりを推進している。
麻生区白山小学校の周辺は子どもの数が減り、隣接地との統合となった。旧白山小学校校舎に対し市は、市有財産の有効活用を図るべく検討に入り、公募によって跡地活用の事業提案を募り、結果、日本映画大学に決定した。1億2810万円で校舎を売却し、土地を賃料1734万円(年額)で33年間の貸与とした。市は高額の収益を得て、大学側は新築より安く設置が可能となる、ウインウインの関係が成立した。
大学は、校舎の改修に5億円を投じてリノベーション。原型をとどめつつも、かつて学んだ小学校の校舎とは思えない程、デザイン性あふれるモダンで綺麗な建築物に姿を変えていた。市との協定も結ばれ、施設や校庭等を、災害時の避難所とする他、地域開放もする。地域への貢献も忘れてはいなかった。