演説

IMG_0678.JPG かつての宰相、三木武夫氏が「良い文章の書き方」を、作家の井上靖氏に尋ねたことがありました。井上氏はこう答えたそうです。一言、「いい文章を読むこと」だと。それでは同様に、いい演説をするにはどうしたらいいのでしょう。そうです、いい演説を聴くことなのです。私は職業柄、演説をします。人の演説を聴く機会も多くあります。そこで、今夜は「演説技法」について論じます。

先ほど、久しぶりに良い演説を聴く機会に恵まれました。「これでいいのか日本の防衛」と題した、佐藤正久先生(参議院議員)の講演です。佐藤先生は「髭の隊長」の愛称でも広く知られており、当時のイラクの先遣隊長(自衛隊)として、ご存知の方も多いことでしょう。佐藤先生の演説は、実に感動的でした。

演説には2種類あります。良い演説とそうでない演説です。それでは良い演説とは何でしょう。それは聴き手側からみて、時間の長短に関係なく、時間を感じさせない、あきない話です。加えて、聴いた後でも話の余韻が残り、印象深い言葉が一つでも残るものです。一方、そうでない演説は、話し方がいくら流暢でも、聴いていて退屈で、後に内容が一つも残らない話です。

 佐藤先生のお話は、1時間5分にも及ぶ長いものでした。スタートから終了まで、あっという間のように感じました。まるで、私が好きなJAZZの音楽を聴いているかのように。そうです、私は話にぐっと、引き込まれていたのです。その話力はどこから来るのでしょう。きっと、戦場における厳しくも過酷な、実体験に基づいた話だからこそ、自然に集中して聴けたのでしょう。

ある別の作家がいっていたことを思い出しました。いい文章とは何か。それは、「想像力をかきたててくれる文章」なのだと。佐藤先生の講演には、ある時から自らがイラクの戦地に立っているような錯覚さえ感じる内容もありました。だからこそ、あの時の言葉が心に印象として残っているのです。

 明日は、続編。講演の内容について、ご紹介します。