新しい自治の形

川崎市が「地方分権の推進に関する方針」を示した。これに関して私のところには、市民の方から多くの意見を頂いている。方針にある「新特別市構想」とは、一体何を意味するのだろうか。それは、簡単にいってしまえば、国・県・市の3層構造を改め、国・市の2層構造を実現するということである。目的は、県が行っていることを特別市で行い、無駄を省いた効率的な行政運営を図ることにある。

 

それでは特別市になると、どのように変わるのだろう。例えば、阿部孝夫市長がいっているように、新たに市警本部を設置して、地域の団体と一体となり、安全対策を講ずることが可能となる。税制面では、市民税と県民税が徴収されているが、川崎市民に限っては県民税を徴収されることがなくなる。ただし、財政調整機能をどうするかという議論は残るのだが。

 

昭和22年に「特別市」制度なるものがあった。これは地方自治法に位置づけられたが、適用される都市はなかった。当時の5大市が特別市になれなかったのは、県の反対が強かったためである。昭和31年にはその規定から外れ、一度は忘れ去られていた。現在、民主党を中心に、地方行財政検討会議において、地方自治法の抜本的な見直しや、(仮称)地方政府基本法の制定に向けた議論が進んでいる。もちろん、新たな特別市制度を実現しようとするならば、法律を改めなくてはならない。

 

 地方分権の推進に関する方針は、指定都市市長会や九都県市首脳会議を通じて、国に提案するとしている。今後、道州制の議論は、しばらく進まないだろう。であるならば、基礎自治体である川崎市から、新たな大都市制度の創設に向けて、積極的に提案をしていくことは意義がある。神奈川県内には3つもの政令指定都市があり、県と政令市の役割と機能を問う意見が後を絶たない。そのような事を考えれば、新たな特別市構想は、これからの分権型社会にふさわしい形だといえる。