空中楼閣だったのか

 首相のたった一言で26000円(昨年の夏のM党の目玉政策)のうちの13000円があっという間に消えてしまいました。空中楼閣とは、「大空の中に建物をつくるように、根拠のない物事、架空の物事」の意です。私たちは、蜃気楼でもみていたのでしょうか。川崎市では、子ども手当の支給が今日から始まりました。待ち望んでいた方もいれば、あーそうだったのと言う人もいるでしょう。そもそも、子ども手当の13000円の額は適当なのでしょうか。ここでは、受け取る側の視点ではなく、支出側(財源)の視点で論じてみます。

日本の子育て給付金は、GDP比で1.2%程度です。OECDの平均が2.3%ですから、先進国と比較すると見劣りするという議論があります。これは、はたして正しい見方なのでしょうか。OECDの消費税率は日本の2倍から4倍あります。国際比較財政研究という学問では、その国の歳入と歳出の構成を含めて議論しないと、数字のトリックに気がつかないことがあると教えています。

この制度は、国内の財政事情からみても問題があります。日本の2010年度予算は、過去最高の92兆円の予算を記録しました。税収が37兆円しかないのに、倍以上の予算を組んでいるのです。その原因の一つは、予算の見通しの甘さにあったといえます。なかでも、国の総予算である約200兆円から、事業仕分けなどの効果としで、9兆円を生みだすとしていました。実際は7000億円にとどまったのです。

子ども手当は、会期中の川崎市議会でも議論となりました。見切り発車的な側面が伺えるこの制度ですが、自治事務を預かる行政も対応に困っているのが現状です。川崎市が実施している他の手当や助成の取り扱いは、国の施策の方向性が定まらない限り、独自の施策の展開に影響を与えています。

子ども手当の満額支給を改め、保育所の待機児童対策や施設・サービスの充実に充てる方向性を示したことは評価します。大盤振る舞いの給付から転換を図り、真に困っている子育て家庭に支援を行うことが重要です。結果として少子化対策としても効果があがるのです。