「最小不幸の社会」って?

 「最小不幸の社会をつくることだと考えている」。菅首相が言ったこの言葉の意味は、一体どんな意味があったのか。なんだか、暗い社会をイメージしてしまう。不幸なことがなるべく起こらないような社会を実現したいとでも言いたかったのか。

 今朝の朝日新聞「私の視点」にあった、米コロンビア大学教授のジェラルド・カーティス氏の寄稿文が目にとまった。インデックスには「菅首相への注文」とある。読んでみると「今のように国民が未来に大きな不安を抱いている時に政治指導者が暗い話をすれば、国民はより暗くなる、やる気も失せる。菅さんは、これをやれば絶対によくなると語ることが大事だ」。

菅首相の言葉は、市民運動家であった菅氏の生い立ちから出た発想として捉えれば、このメッセージも理解できなくもない。しかし、ネガティブな印象を与えるメッセージなら言わない方がいい。

 私はジェラルド・カーティス氏の著書が好きである。大学院で政治学を研究していた時に、明治大学大学院教授の中邨先生に、カーティス氏の著書『政治と秋刀魚』を薦められて読んだことがあった。この題名、ちょっと興味が誘われませんか。長年、日本で政治を見続けてきたカーティス氏の著書は、日本の政治評論家よりも的をえているロジックに、インパクトを受けたのである。

今の行き過ぎた政策にまったをかけられるのは、野党である自民党でしかない。日本はこのままいけば「糸の切れた社会主義国家」になってしまうとまで言う者がいる。政治体制は、グリッド・ロック(ねじれ)をあえて選択しなければ、最小不幸どころの話ではすまなくなる。私は、今の政権の政策に危機感を抱いている。